では、「相手を過剰に善意で見るクセ」を
① 幼少期要因(心理的背景)
② 性格傾向(気質)
③ 安全技術スキル不足(状況的要因)
のどれが主因かを切り分けるための簡易診断フレームを作ります。
簡易診断フレーム(3領域チェック)
Step 1:幼少期要因(心理的背景)
該当しやすいサイン
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幼少期に「人を信じることが美徳」と強く教え込まれた。
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家族内で、拒否や批判をすると関係が悪化する環境だった。
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境界線を持つと罪悪感を感じる。
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自分の安全より、相手の気分や機嫌を優先してきた。
→ 多く当てはまるなら:心理的な「境界線設定困難」の可能性が高い
(これは回復には心理教育や自己主張訓練が有効)
Step 2:性格傾向(気質)
該当しやすいサイン
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初対面の人に自然と好意的な感情が湧く。
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人を疑うと自分が疲れる・嫌な気持ちになる。
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「慎重でいる」より「気持ちよく接する」方が自分らしい。
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相手を評価するよりも、まず仲良くなりたい気持ちが先立つ。
→ 多く当てはまるなら:高共感・高信頼の性格傾向
(これは気質なので完全に消す必要はなく、「安全チェック」とのセット運用がカギ)
Step 3:安全技術スキル不足(状況的要因)
該当しやすいサイン
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相手の技術や判断力を短時間で見抜く方法を知らない。
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チェックリストや事前確認の習慣がない。
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技術の妥当性よりも「言ってることが自信ありそうか」で判断してしまう。
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危険兆候を察知しても「なんとかなる」と思ってしまう。
→ 多く当てはまるなら:安全技術の評価スキル不足
(これは訓練で短期間でも改善可能)
まとめ判定
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1 が多い → 境界線と自己防衛感覚を育てる心理的ワークが優先。
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2 が多い → 性格を変えるより、安全確認を性格の一部として習慣化。
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3 が多い → 技術面のトレーニングとチェックリスト化で即改善可能。
■ クライミングバージョン
では、「ロープ長すら計算しない人」を事前に見抜くための、
クライミング版・相手評価シートを作ります。
これは「善意解釈で危険人物を見逃す」クセを補正するために、
気質や幼少期の傾向に関係なく、事実ベースで判断できる仕組みです。
クライミング版:相手評価シート(事前確認用)
A. 基本安全意識の確認
質問 | OK基準 | NGサイン |
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出発前にロープ長を確認しますか? | 自ら「ロープは〇mだから、ルートは〇mまで」と口にする | 聞くまで話題にしない/数字を曖昧に答える |
ビレイ器の使い方や特性を説明できますか? | モデル名やブレーキ方向を即答できる | 「これで大丈夫」とだけ言う |
ギアの点検を出発前に行いますか? | 相互チェックを提案する | 点検なしで登り始める |
B. 技術・判断力の確認
質問 | OK基準 | NGサイン |
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ルートの終了点と下降方法を確認しますか? | 「終了点は〇m、下降は〇で」と説明できる | 説明なし/現地で適当に確認する |
落下距離やクリップ位置を計算しますか? | 落下時の距離やクリップ位置を事前に検討する | その場の感覚だけで判断 |
過去の経験を具体的に説明できますか? | ルート名・高度・条件を具体的に話せる | 「色々登ってる」「大丈夫」のみ |
C. 態度・コミュニケーションの確認
質問 | OK基準 | NGサイン |
---|---|---|
意見や提案を受け入れますか? | 安全提案に「そうしよう」と応じる | 「大丈夫だから」と押し切る |
不安や疑問を共有しますか? | 自分の不安や苦手を話す | 弱みを一切話さず自信満々 |
計画を一緒に立てますか? | 「どうする?」と相談する姿勢 | 勝手に決める/詳細を共有しない |
評価方法
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各質問でOKなら1点、NGなら0点。
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合計 8点以上:信頼してパートナー可
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5~7点:技術指導・安全確認を多めに入れる前提でOK
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4点以下:パートナーとしては危険、別の人を探す
これをプリントやスマホに入れておき、
相手の「人柄」ではなく「行動と言動」で判定すれば、
幼少期由来の“過剰善意モード”でも判断を誤りにくくなります。
もし希望があれば、この評価シートに**「相手の自己申告だけではなく、その場で小テストする質問集」**を付け足して、ほぼ確実にロープ長すら計算しない人を炙り出せる実践版にできます。